今日もまた、逃がした砂金はデカかった(仮)

砂金採りや自然金についてのブログです

鹿児島県の金山と砂金

しばらく更新を怠っており申し訳ありませんでした.自分の怠惰な性格が災いして砂金採りにはしばしば行っていたものの記事にはしていませんでした.幸い現在時間があるので久々に記事を書こうと思いいたりました.

 

さて,諸事情で鹿児島にしばらく滞在することになったのですがせっかくなので有名な金山跡などを回ろうと思いまして永野金山や大良鉱山などに行きましたが,川を見て久しぶりに砂金を採りたくなってきました.しかし鹿児島に滞在する中で自由度は低いと思っていたため特に砂金を採る道具の用意などはしていませんでした.そこで道具は適当にホームセンターで購入した植木鉢の下に引くトレーで代用しました.

 

川に降り立つと良い感じの天然のリッフルがあったのでそこの砂をパンニングしたとこ砂の2割ほどが重砂で,一度のパンニングで20~30粒ほどの砂金が採れました.九州ではなかなか有意な量の砂金が採れる産地は少ないのですが当産地は北関東

 


の河川と遜色のないくらいの量の砂金が採れることが確認できました.しかし金粒の平均のサイズは0.5mm弱と小さく,自分の腕の未熟さを痛感しました.また使用した植木鉢のトレーは表面がつるつるしており砂金と重砂の分離が難しく,途中で分離をあきらめて後で分離をすることにしました.

 

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取れた砂金(一部)です

 

砂金の産出を1時間ほど確認した後は供給源である金山を見に行くことにしました.当金山は50程度の金鉱脈があったと言われており,そのほとんどが東西系の走行を示します.九州の金鉱脈はほとんどが東西系の延長を示し,これは広域的な東西圧縮南北拡張の応力が大きく影響していると考えられています.ただし当金山では同じ東西系でもN70°WとN80°Wを示す脈が存在し,これらの脈の交差点(落合)で富鉱帯(直り)を形成すると言われています.二種の走行を示す要因は明確にはわかりませんが,鉱床形成前に広域的な応力場に変化があり,2種類の断層が形成され,その空間を埋めるようにして鉱脈が形成されたのでないかと個々人的には思います.

 

さらに当鉱山で富鉱帯が形成された要因の一つとして帽岩(キャップロック)の存在が触れられています.当鉱床では鉱床の胚胎母岩の上に比較的透水性の低い頁岩が存在しており,これが熱水の上昇を阻害し,金銀が多量に沈殿したのではないかという説があります.胚胎母岩の境界付近に富鉱帯が形成されることは珍しくなく,馬上鉱山や菱刈鉱山でも見られます.しかしその富鉱帯形成メカニズムは一般化が困難で,説得力のある説明は無いように感じます.

 

さて実際に坑口に着きましたが特に石が残っている様子はなく,辛うじて石英片が1つ落ちているのみでした.石英片を一つ見ただけなので明確なことは言えませんが浅熱水性金銀鉱床にしては石英の粒子が粗いように感じました.当鉱山では浅熱水性金銀鉱床にしては珍しく多くの肉眼金を産出したといいますが,熱水が沈殿する過程に何かヒントがあるのかもしれません.ただし文献を参照すると当鉱山ではほかの浅熱水性金銀鉱床と同様にヌケガラ石英を多量に産出したそうなので金の沈殿に熱水の減圧による沸騰が関係していることに疑いの余地はなさそうです.

 

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 金山が閉山してしまっているのは大変さみしいですが,当金山では案内板の設置や整地もされており,末永く文化財として保全されて欲しいと感じました.